俺様Dr.に愛されすぎて
「医者も看護師も、病院で人の命を預かるからには亡くなることも覚悟しなきゃいけない。そうわかってたし、言い聞かせてきた。今では多少、慣れてきた」
それは、先日彼が話してくれたことにつながるのだろう。
『毎日のように、命をつないで、亡くして、そんなことを繰り返すうちに死ってものに対する感覚が、少しずつ少しずつ麻痺していく』
麻痺して、慣れて、その心はきっと傷ついていった。
「けど、いくら言い聞かせてもつらいものはつらい。失うことも、苦しいことに慣れるのも、つらい」
傷つくことは怖い。
だから、私は逃げてばかりいる。
だけど真木先生は逃げることなく、向き合って。慣れるくらい、何度も何度も。
その胸の痛みを思うと、この胸もぎゅっと締め付けられた。
それを伝えるかのように、私はつないでいたその手を握る手にぎゅっと力を込めた。
ひとりで、苦しまないで。
つらいときは、つらさを見せてもいいんだよ。
あなたが私の過去を受け止めてくれたように、私も、あなたの心にのしかかるものを、受け止められたらと思ってる。
そう、伝わったらいい。
その手に、真木先生はなにかを感じ取ったのかこちらを見て微笑んだ。