俺様Dr.に愛されすぎて



……まぁ確かに、ここに来れば真木先生がいるとイメージがついてしまっていることは確かだけれど。

けどそれは別に会いたいとかそういう意味ではなくて、それに見慣れてるだけというか、そう、例えるならお昼ごはんにラーメンチャーハンセットが当たり前になるとチャーハンがついてないとちょっと足りない気がするというか……。

あぁ、こんな時の例え話もまた色気がない。



そんなことを考えながら病院の裏口のドアを開けた。

すると、目の前にはザァァ……と勢いよく降る大雨。



「うわ……降ってる」



病院内にいるうちにすっかり雨は降り出してしまったらしい。降らないうちに、という願いもむなしく、雨は音を立て地面を叩きつける。



仕方ない、走るか……。

覚悟を決め、私は鞄が濡れてしまわないように腕の中にぎゅっと抱きしめると走り出そうとした。



「あれ、藤谷?」



その時、名前を呼ぶ聞きなれた声。

振り向くとそこには、不思議そうな顔でこちらを見る真木先生の姿があった。



いつものスクラブ姿とは違う、黒いパーカーにデニムという私服姿だ。

突然声をかけられた驚きとともに、その姿の新鮮さに目がいく。



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