俺様Dr.に愛されすぎて
10.想いは過去から
愛しい、だから触れたい。
その衝動は抑え切れず、その肌にそっとキスをした。
ほんの一瞬、かすかに触れるだけの小さなキス。
だけど私の精いっぱいの、彼への気持ちの表現。
真木先生のもとへお弁当を届けに行った日から、一週間近くが経とうとしている水曜日。
私はオフィスにある自分の席で、ひとりぼんやりと頬杖をついたまま固まっていた。
……ていうか。私この前、真木先生相手になにしちゃったんだろう。
いくらからかわれたからって、自分からキスをするなんて……!
どちらかといえば恋愛には奥手だと思っていた自分がそんなことをするとは思わず、思い出しては頬を赤らめ頭を抱えている。
けど、したいって思っちゃったんだもん。
愛しい、触れたい、指先だけじゃなくて唇でも。
その気持ちから、私は自分が真木先生をどう思っているのか、ついに気づいてしまった気がする。
問題はこの気持ちをどうすればいいのか……。
するとその時、突然背後から頭をなにか柔らかいものでポカッと叩かれた。
「こら、藤谷。さっきから手止まってるぞ」
「わっ!」
振り向けば、そこに立っていたのは呆れた顔で私を見る部長。
その手には筒状に丸めた書類があり、それで私の頭を叩いたのだろうと察した。