俺様Dr.に愛されすぎて
「部長!す、すみません!」
「ったく、さっさとデータまとめて外回り行ってこい。まだまだ仕事はあるんだから」
「はーい……」
言われて見れば、確かに目の前のパソコンの画面に映ったデータ入力のファイルにはまだなにも入力されていない。1時間前とほとんど変わっていないままだ。
「しっかりしろよ、今頑張らないと折角の昇給の話も流れるぞ」
「へ?昇給?なんですか、それ?」
いきなり出てきたそのひと言に、意味がわからず首をかしげた。
すると部長はニヤリと笑って、ここだけの話とでもいうかのように顔を近づけ声を潜めた。
「喜べ藤谷。お前の働きぶりを評価して、主任に昇格という形で話がまとまった」
「え!?本当ですか!?」
主任って、営業部の主任に!?
数いる社員たちの中で上の立場になるということは、仕事が認められるということだ。
言葉でも数字でもなく、立場という形で表れるのはまた違った嬉しさがある。
ぱぁっと表情を明るくして喜ぶ私に、部長はその反応を予想していたかのように笑った。
「当然今の仕事の他にもっと大きな仕事も増えるからな。覚悟しておけよ」
大きな仕事……というのは、大きな営業先や社員たちの取りまとめなど、今以上の仕事だろう。
やりがいはあるかもしれない、けど……。
「でも今の担当先だけで手一杯なのに他の仕事も出来ますかね?」
そう、正直私は今の営業先を回って管理をして報告をして……それだけで手一杯なところもある。ましてや、当麻総合病院のように大きなところもあるし。
けれど、その心配すらも予想していたかのように部長はふふんとまた笑う。