俺様Dr.に愛されすぎて
「その辺は心配いらない。今の担当先は永野に引き継いでもらう予定だからな」
永野、というのは私の2つ下の後輩・永野くんのことだ。
そっか、彼に引き継いでもらうんだ。
それなら私の負担も減るし、永野くんのような愛嬌もあってしっかりした子なら安心……って、あれ。
「それってつまり、担当交代ですか!?」
思わず声を大きくした私に、部長はうるさそうに顔を歪めた。
「あぁ。引き継ぎだけは早め早めでやっておいたほうがいいと思うから、今日あたりから営業先に話は通しておくようにな」
そして話を切り上げると、私の肩をポンッと叩いてその場をあとにした。
担当交代……。
そりゃあ、昇給するのも大きな仕事を任せてもらえることも嬉しい。
だけど、それはつまり当麻総合病院に通うことはなくなるということ。
そしたら、真木先生とは会えなくなる。
いや、会おうと思えば会える。番号だって知っているし、連絡だって取り合う仲だ。
だけど言ってしまえば、会おうと思わなければ会えないということ。
顔を合わせなくなったら、どうなるんだろう。
忙しさにお互い連絡をとることもなくなったら?
彼が言葉にする『好き』の気持ちも、流れて消えてしまうのかな。
信じたい、って思うのに。
少しの不安に、心はすぐ揺れ疑ってしまう。