俺様Dr.に愛されすぎて
「えぇ!?藤谷さん担当外れちゃうの!?」
データ入力を終え、やってきた当麻総合病院で、担当交代の話を聞いた宮脇さんは大きな声をあげた。
「そうなんです、ようやく慣れてきたところだったんですけど……」
「寂しくなっちゃうわねぇ。けど出世するのはおめでたいことだしね!これからも頑張ってね!」
寂しそうにしながらも笑顔を見せて、私の背中をバシッと叩いた。
「新しい担当ってどんな子?」
「後輩の男の子です。爽やか系ですよ」
「やった!!」
宮脇さん、嬉しそうだなぁ……。
寂しさも一瞬で吹き飛ぶようないい笑顔でガッツポーズをする宮脇さんに、苦笑いがこぼれた。
「私ちょっと先生たちにご挨拶に回ってきますね」
ここの病院の先生たちは、ほとんどが私が担当についた頃からお世話になっている人たちだ。
毎週のように顔を合わせているから、中には娘のようにかわいがってくれている先生だっている。
担当変えとなればいきなり変更の話をするわけにもいかないし、事前に話はしていかなくては。
そう思い、先生たちのもとへ向かおうと院内を歩いていった。
もちろん、真木先生にも報告しなくちゃいけないよね。
寂しがってくれたり、するのかな。
いや、『ふーん』とかそっけなく言って終わってしまいそうな気もする。
好き、とかは言えるくせに変なところでひねくれる人だからなぁ。
彼の反応がうまく想像つかなくて、少し緊張してしまう。
とりあえず、まずは上の階から回って……。
そう考えながら、廊下を歩いてきた先……院内にあるカフェの方へなにげなく目を向けた。
すると目に入ったのは、カフェから出てきた白衣姿の真木先生。
その手にはコーヒーのカップを持っており、テイクアウトでコーヒーを買ったところなのだろうと察した。