俺様Dr.に愛されすぎて
「あ、真木先……」
『真木先生』、といつものように声をかけようとして、彼のすぐ隣にひとりの女性がいることに気づく。
その人は、爽やかな水色のブラウスに黒いパンツ、と華奢な体がよくわかるスタイルに白衣を羽織っている。
真っ黒いセミロングヘアとぱっちりとした目が印象的な美人だ。
わ。顔、小さい……。
格好から見てきっと女医なのだろう。けれど、その綺麗さから、女医役のモデル、というほうがしっくりくるくらいだ。
彼女は真木先生と楽しそうに話して、彼の腕に触れている。
真木先生もいたって普通に話しているあたり、なにやら親密な仲なのだろうか。
「あ、藤谷さんいたいた。ごめんなさいね、さっき伝え忘れたことが……」
「宮脇さん、あれって誰ですか!?」
そこにちょうど追いかけやってきた宮脇さんに、私は真木先生の背中を指差しながら問いただす。
宮脇さんは『あれって?』と言った様子で真木先生の方を見ると、納得したように頷く。
「あぁ、黒川先生ね」
黒川先生?
大きな病院だからすべての医師を把握しているわけではない、けれど女医さんで黒川なんて人は初めて聞いたものだから、「って?」と首を傾げた。
「黒川菜々さんっていって、元々はうちの外科医だったんだけど、ニューヨークにある提携先の病院に異動してるの。で、今回仕事の都合で一時帰国してるのよ」
「にゅ、ニューヨーク……」
「帰国子女らしいから元々英語もペラペラなのよね。実家もお金持ちらしくて、本人もエリート、おまけに美人。すごいわよね~」
な、なんてすごい女医……!
少したずねただけで、あれもこれもと出てくる彼女の情報に、私は「へ、へぇ」とひきつった笑みを見せる。
なんでも持っていて羨ましいとか妬ましいとかそんな感情より、まず『すごい』の言葉しか出てこないくらいだ。
すると宮脇さんは思い出したように言葉を付け足す。