俺様Dr.に愛されすぎて



「イケメンに声かけられて揺らいだか?」

「違います、そんなんじゃないですってば」



真木先生からすれば、やはり面白くないのだろう。私と修二の仲を探るように疑わしげな目を向ける。

言いたくはないけれど、このまま黙っていて変な誤解を与えてもいやだし、と私は修二のことを話すことにした。



「……元カレ、なんです」

「は?」

「だから!真熊薬品の営業が!昔私をこっぴどく振った元カレなんです!」



一度で理解してくれる気配のない彼に、じれったさを伝えるかのように言う。

すると真木先生は驚きを見せたあと、さらに疑わしげな目つきで私を見た。



「ってことは、その元カレと飯食ってきたってわけか」

「それは……その、なりゆきというか」



あぁ、元カレと食事、ということがさらに気に入らなかったみたいだ。

ごにょごにょと言葉を濁し、どう言葉を続けるべきか悩む。



どうしよう。真木先生に、言うべきかな。

けど、真木先生に言ってどうする?

どんな答えを期待している?



……けど、その言葉を聞けたら、この気持ちもはっきりするんじゃないかと思う自分もいる。



「……元カレから、『やり直したい』って、言われて。反省してる、ごめん、もう一度チャンスがほしいって、そう言われました」



先ほどの修二との話をぼそ、と呟くように言うと、真木先生は表情を変えないまま、私を見つめ続ける。

そして、小さくひらかれた薄い唇から発せられた言葉は



「そんな言葉、信じるのか?」



抑揚のない、ひと言。



「年数が経ったって、人は簡単には変わらない。変わったとしても、過去に言った言葉は消せない」



変わらない。

消せない。

それは、酷だけれど確かな現実。



「そんな奴やめて、俺にしろよ」



そして、心の底で望んでいた言葉。



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