俺様Dr.に愛されすぎて



「……って、言いたいけど、やめておく」



ところが、続けて発せられた言葉は意外なものだった。



「え……?」



やめておく、って……どういうこと?

驚きから、小さな声がひとつ漏れた。



「もしかしたら、変わることもあると思うし、過去の言葉を乗り越えられることもあると思う。いい可能性も悪い可能性もふまえたうえで、藤谷が決めるべきだ」



変わることもある。

消せなくても乗り越えられる。

それも、また現実。



「大切なのは、藤谷の気持ちだから」



真木先生はそうはっきりと言い切ると、その場を歩き出した。



待って、と引き留めることもできない。

彼から伝えられた言葉は、期待する言葉とは違うものだった。

むしろ私自身が決めるべきだと、突き放されてしまった。



この心を、引き留めるひと言がほしかった。

強引にでも腕を引いて、『俺だけ見てろよ』って言ってほしかった。

……なんて、ワガママ?



だって、何度も『好き』って言っていたじゃない。

なのに、私次第なんて突き放すような言い方をしたりして。



……なんで?

その気持ちが、わからなくて不安になる。






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