俺様Dr.に愛されすぎて
「やだっ……」
真木先生に強く肩を引っ張られ、振り向いてしまう。
真っ直ぐに私を見る彼と、再び目と目が合った瞬間、どうしてか私の目からは涙がポロッとこぼれた。
「藤谷……?」
どうして、というようにひどく驚くと同時に、その手からは力が抜ける。
私はそれを見逃すことなく、手を振り解くとその場を駆け出した。
「おい!藤谷!!」
最悪だ。
涙が出る、なんて。
自分が発した言葉の重さに、心が押し潰されそうだ。
今私がするべきこと。
それは、真木先生に知らせること。
その思いは錯覚で、いっときの気の迷いで私を選んじゃいけないって。
それよりも、その心が本当に望んでいる未来を選ぶべきだって。
そう伝えるために、言った。
『私、真木先生とは付き合えません』
なのに、目を見たら吸い込まれそうになる。
向き合えば言葉を撤回したくなる。
私を選んでください、なんてありえないことを望んでしまう。
今、こうして彼の元を去りながら思い知る。
その『好き』が、本気のものだったらと信じたかった。信じたいと思っていた。
ううん、もう信じていた。
だって、その思いはこの胸にも芽生えていたから。
好き。
真木先生のことが、好き。