俺様Dr.に愛されすぎて
11.僕の世界で、きみだけが
『真木先生』
真っ白な世界で、きみが笑う。
そんな夢を見るくらい彼女が好きで、好きで、どうしようもなくて。
なのに、言葉も気持ちも届かない。
掴んだその腕すらも、離れてしまう。
どうして、泣いていたんだろう。
その問いかけひとつすらも、出来ずに。
「……先生、真木先生、真木先生ってば!」
段々と苛立つように大きさを増すその声に、はっと我に返る。
デスクから顔をあげれば、俺の横では若い女性看護師が呆れた顔でこちらを見ていた。
「もう、なにボーッとしてるんですか。診察終わりましたし、今のうちにご飯食べてきちゃったらどうですか?」
「あ、あぁ……」
言われてから視線を向ければ、そこはひと気のない診察室。
デスクの上のデジタル時計は、『14:30』と表示されている。
今日も内科外来は大混みで、内科医数名がそれぞれ診察室を開けても診察を終えたのは13時すぎだった。
診察を終えてからの記憶がない……。
まずいな、ここ一週間ほど仕事中以外ぼんやりすることが増えて、身が入らない。
おかげで昨日はスクラブのまま帰ろうとするし、今朝はスマートフォンと間違えてテレビのリモコンを持ってきてしまった。しかも、気付いたのは病院についてから。
鞄の中のリモコンを思い浮かべると、そんな自分に呆れてため息が出た。
……昼食、食ってくるか。
椅子から立ち上がると同時に、診察室のドアがコンコンとノックされる。