俺様Dr.に愛されすぎて
11.僕の世界で、きみだけが





『真木先生』



真っ白な世界で、きみが笑う。

そんな夢を見るくらい彼女が好きで、好きで、どうしようもなくて。



なのに、言葉も気持ちも届かない。

掴んだその腕すらも、離れてしまう。



どうして、泣いていたんだろう。

その問いかけひとつすらも、出来ずに。







「……先生、真木先生、真木先生ってば!」



段々と苛立つように大きさを増すその声に、はっと我に返る。

デスクから顔をあげれば、俺の横では若い女性看護師が呆れた顔でこちらを見ていた。



「もう、なにボーッとしてるんですか。診察終わりましたし、今のうちにご飯食べてきちゃったらどうですか?」

「あ、あぁ……」



言われてから視線を向ければ、そこはひと気のない診察室。

デスクの上のデジタル時計は、『14:30』と表示されている。



今日も内科外来は大混みで、内科医数名がそれぞれ診察室を開けても診察を終えたのは13時すぎだった。



診察を終えてからの記憶がない……。

まずいな、ここ一週間ほど仕事中以外ぼんやりすることが増えて、身が入らない。



おかげで昨日はスクラブのまま帰ろうとするし、今朝はスマートフォンと間違えてテレビのリモコンを持ってきてしまった。しかも、気付いたのは病院についてから。

鞄の中のリモコンを思い浮かべると、そんな自分に呆れてため息が出た。



……昼食、食ってくるか。

椅子から立ち上がると同時に、診察室のドアがコンコンとノックされる。



< 139 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop