俺様Dr.に愛されすぎて



「この前の話の続き、なんだけどさ……改めて、俺とやり直さない?」

「修二……」

「俺、今度こそ沙織のこと大切にするから。もう、中途半端なこととかしないから」



彼が口にする、再生の言葉。

まっすぐにそう言ってもらえることが、嬉しい。

人は変われる、そう信じたい。

私が真木先生の言葉を信じていったように。



『うん』『そうだね』『やり直そう』

まずは、そう頷こう。



その時だった。

不意に降った水滴が、ポツ、と頬に触れた。



「え?」



修二と同時に空を見上げると、頭上の暗い雲からはパラパラと小雨が降り出した。



「えっ、雨?」

「いきなり降ってきたな……あ、大丈夫。折りたたみ傘ある」



突然の雨にざわざわとする周りの声を聞きながら、修二は鞄から黒い折りたたみ傘を取り出す。

そしてそれをパンッと広げれば、小さな傘は私たちを守るように広がった。


雨の中、傘の下にふたり。

それはあの日と同じシチュエーション。

だけど、隣にいるのは彼じゃない。



あの日の真木先生の笑顔が、真剣な顔が、触れるだけのキスが思い出されて、胸を強く揺さぶった。



「あ……」



瞬間、私の頬には一筋の涙が伝う。

溢れ出す想いを、もうこれ以上閉じ込めることはできない。

だって、なにをしたって真木先生が出てくるの。



修二といても、どんなに優しい言葉をかけられても、ダメ。

この心は、あなたのことばかり。



あなたが言った『好き』を信じたい。

嘘だなんて、軽い気持ちだなんて思えない。

いつの間にかこんなにも、好きになっていたんだ。



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