俺様Dr.に愛されすぎて
「沙織……?」
突然泣き出す私に、修二は驚きうろたえる。
なにかを察したのか、抱きしめようと傘を持っていないほうの左手をこちらへ伸ばした。
けれど、その次に私の肩を引っ張ったのは、背後から伸ばされた大きな手だった。
「え……?」
抱き寄せられる感触に顔をあげれば、そこにいたのは真木先生だった。
「真木、先生……?」
雨に濡れ、苦しそうに息をあげた彼は、修二を睨むように見つめる。
そんな真木先生を見て、修二は驚き目を見開いた。
「は……!?って、あれ、当麻総合病院の……」
「悪いけど、藤谷は俺のだから」
真木先生はそれだけを言うと、私の肩を抱いて歩き出す。
なんで?
なんでここに、真木先生が……。
この前私は彼を拒んだのに。
突然現れて、『俺の』なんてどうして?
「えっ……ま、真木先生、なんで……」
「看護師たちが噂してたから、邪魔しにきた」
そう言って、真木先生はすぐ近くのお店の屋根の下に入ると足を止めた。
改めて彼を見れば、息をあげる肩は小雨に濡れている。
着ているシャツの襟もとはよれており、それほどまでに急いできたのだろうと察した。
「なんで、ですか」
「……藤谷のこと、譲れなかったから」
え……?
邪魔しにきた、って
譲れなかった、って
なんで、どうして?