俺様Dr.に愛されすぎて



「沙織……?」



突然泣き出す私に、修二は驚きうろたえる。

なにかを察したのか、抱きしめようと傘を持っていないほうの左手をこちらへ伸ばした。

けれど、その次に私の肩を引っ張ったのは、背後から伸ばされた大きな手だった。



「え……?」



抱き寄せられる感触に顔をあげれば、そこにいたのは真木先生だった。



「真木、先生……?」



雨に濡れ、苦しそうに息をあげた彼は、修二を睨むように見つめる。

そんな真木先生を見て、修二は驚き目を見開いた。



「は……!?って、あれ、当麻総合病院の……」

「悪いけど、藤谷は俺のだから」



真木先生はそれだけを言うと、私の肩を抱いて歩き出す。



なんで?

なんでここに、真木先生が……。



この前私は彼を拒んだのに。

突然現れて、『俺の』なんてどうして?



「えっ……ま、真木先生、なんで……」

「看護師たちが噂してたから、邪魔しにきた」



そう言って、真木先生はすぐ近くのお店の屋根の下に入ると足を止めた。



改めて彼を見れば、息をあげる肩は小雨に濡れている。

着ているシャツの襟もとはよれており、それほどまでに急いできたのだろうと察した。



「なんで、ですか」

「……藤谷のこと、譲れなかったから」



え……?

邪魔しにきた、って

譲れなかった、って

なんで、どうして?




< 154 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop