俺様Dr.に愛されすぎて
「だって……真木先生、ニューヨークにいくんでしょう?出世にもつながるし、黒川さんだっているし……」
混乱しながらも伝える、それ以上の言葉を遮るように、真木先生は私を抱きしめた。
冷たい雨に降られてもまだ熱い、彼の体の熱が伝わる。
好き、なんて錯覚だったんじゃないの?
彼には相応しい場所があって、人がいて
なのにどうして、まだこうして抱きしめてくれるの?
「……ニューヨークは行かない」
「え?」
「俺はこっちに残って、身近な人々の力になりたい。……それ以上に、藤谷のそばにいたい」
驚き顔を上げると、彼は雨に濡れた頬をそっと撫で、優しく微笑む。
「フラれても、嫌われたとしても、諦めつかない。それくらい、藤谷しか見えないんだ。だから、藤谷自身に俺を選んでほしかった」
だから、真木先生は私を引き留めなかったの?
彼に押し負けたからとか、流されたとか、そうじゃなくて、私自身の意思で選ぶために。
なのに私は、何度も何度もその心を疑って、信じられなくて
『もう一度信じてみようと思います』
そう言って、はねのけた。
だけど彼は、それでも好きでいてくれている。
私だけを、見ている。
そんな真木先生にだから、私も素直に向き合いたい。
その気持ちを信じて、この気持ちを伝えたい。
決心するように、彼の服をぎゅっと握る。