俺様Dr.に愛されすぎて
13.番外編
9月になり、暑さも少しずつ和らぐこの頃。
定時の18時ほぼぴったりに仕事を終え、私はバタバタと書類を片付ける。
その姿に、まだ仕事を続けている部長は珍しいものを見るように目を留めた。
「なんだ藤谷、今日はやけに早いな」
「はい、残りの仕事は明日の朝やるので」
とりあえず、今日中にやらなくてはならないものは片付けた。
いつもなら残業してもう少し片付けるところだけれど、朝からソワソワとしていた今日の私はそんな気持ちにはなれず、バッグに荷物を手早く突っ込んでいく。
そんな私に、部長はなにかを察してニヤリと笑った。
「ひょっとしてデートだな?男ができた途端わかりやすい奴め!」
うっ、バレてる。
そんなにわかりやすかっただろうか、と自分の態度が恥ずかしくなる。
「藤谷の名前が『真木』になるのも遠くないな~。真木沙織、うん、悪くないんじゃないか?」
「って、なんで相手が真木先生って知ってるんですか!?」
「なんでって、前に深田も言ってたし、社内中でも噂だぞ。『藤谷がイケメン医師の真木先生を落とした、奇跡が起きた』って」
き、奇跡……。
いやぁ、確かにそうかもしれないけど……その噂ひとつで、社内の人たちが私をどう思っていたのかが、なんとなく想像ついてしまう。
苦笑いをこぼしていると、壁にかけられた時計がふと目に入る。
「はっ!時間!すみません、お先に失礼します!」
そしてバタバタと忙しなくオフィスをあとにした。