俺様Dr.に愛されすぎて
「どうした?ボーッとして」
「へ?あっ、すみません」
池袋から車を走らせ40分ほどの位置にある、真木先生の自宅。
そこは当麻総合病院近くの、この辺でも一番大きなマンションの上階だ。
どんと構えて立派なこのマンションへくると、私はいつもこの大きな窓から見える東京の夜景に目を奪われてしまう。
それは今日も同様で、ぼんやりと外を見ていた私に、真木先生は不思議そうに声をかけた。
「ここからの景色綺麗だなーって、いつも思うんですよね」
「あぁ。これだけの灯りがあると、この街ひとつにもたくさんの人がいて、いろんな生活があるんだろうって思うよ」
そして、時にそれを守るのが、真木先生の仕事。
そんな意味も含んでいるのだろう。一度窓の外を見てこちらを見た彼に、私は笑う。
すると真木先生は、そっとキスをして、私を後ろから抱きしめた。
包むように抱きしめる、ゴツゴツとした大きな手。その手は私のブラウスの裾から服の中へと入り込む。
「ん……真木先生、ごはんまだ……」
「……『真木先生』、じゃないだろ?沙織」
『沙織』、付き合うようになってから彼が呼ぶようになった名前が今だに聞き慣れなくて、胸はドキ、と音を立てた。
「けど……」
「けど、じゃなくて。名前で呼んで」
付き合ってからも、まだ『真木先生』と呼んでしまう私に、彼は時々こうしてねだるように言う。
本当は恥ずかしくてしょうがないのだけれど……折れるようにその名を口にした。