俺様Dr.に愛されすぎて
それから仕事を終えた私は、近くのコンビニで風邪薬とのど飴を買った。そして一度車に寄って、置いたままだった黒い傘を手に取った。
晴れた日に傘を持って歩くなんて、なにかと思われるかもしれない。
けれど、そんな視線も気にせず、私はふたたび病院内を歩くと内科の外来診察室の前で足を止めた。
看護師さんに確認をしたら、真木先生は外来を全て終え、診察室でカルテのチェックをしているという。
邪魔してしまうかも、いらないと思われるかも。それでも、そのままではいやだ。
そんな思いで、コンコンとドアをノックする。
「はい?」
すぐ返ってきた声に少し緊張して、小さくドアを開けた。
「……失礼します」
隙間からこそっと顔を覗かせると、ひと気のない診察室には、真木先生ひとりがいた。
椅子に座りパソコンを見ていた彼は、こちらへ視線を向けると、目を丸くして驚く。
「藤谷?どうかしたのか?」
まさか私が来るとは思わなかったのだろう。問いかける彼に、私は室内に入ると傘をずいっと差し出した。
「これ、返します。助かりました」
「あぁ。別に返さなくてもよかったのに」
そう言いながら、椅子から立ち上がり傘を受け取る。続けて、コンビニの袋をずいっと差し出す。