俺様Dr.に愛されすぎて
「はぁ……なんでうちの会社の上司ってこんな勝手な指示ばっかりするんですかねぇ……」
「会社なんて理不尽なものよ……」
「あーあ、せめてイケメン上司だったら仕事もやり甲斐でるのになぁ」
なげくような声に、パチン、パチンという音が響く。
「深田さん、彼氏いないんだっけ?」
「この前別れちゃったんですよ~。だから余計、毎日に張り合いがなくて」
そんなこと言ったら5年彼氏がいない私は5年も張り合いがないことになるんですけどね……。
長いまつ毛をバサバサとさせる彼女に、つい顔が引きつる。
そんな私に深田さんは思い出したように言った。
「そういえば、藤谷さんの営業先ってイケメンいないんですか?」
その突然の問いかけに、手を止めることなく問い返す。
「へ?いきなりなんの話?」
「だって営業でいろんな病院とか回ってたら出会いも沢山あるじゃないですか。イケメンがいたら紹介してほしいなーって」
「イケメン、ねぇ……」
その言葉に、取引先の医師や看護師さんの顔を思い浮かべる。中でも一番に思い浮かぶのは、真木先生の顔だ。
「……いないことは、ないけど」
「本当ですか!いいなぁ、紹介してくださいよー!」
作業の手を止め、前のめりになって話題に食いつく深田さんに、「いや、その……」となんとも歯切れの悪い返事になってしまう。
そんな私の反応を見逃すことなく深田さんは突っ込んでくる。