俺様Dr.に愛されすぎて
「こんにちは、新和メディカルです」
「あら、藤谷さん。お疲れさま」
大きな病院の裏口から入り、内科外来の受付に声をかけると、女性看護師さんたちが笑顔で出迎えてくれた。
14時という時刻から、忙しさのピークを越えひと安心といったところなのだろう。
ここの外来受付は午前のみ。ただし大きな病院だけあってかなりの待ち時間を要することから、午前中ぎりぎりに受付をしても診てもらえるのは午後すぎということも当たり前なのだ。
内科の看護師長である、50代くらいの中年女性・宮脇さんは「ちょっと待っててね~」と笑いながら手元の書類をまとめる。
「おっ、藤谷さん。お疲れさまです。内科の田丸先生が、あとで機器について聞きたいことがあるって言ってましたよ」
「わかりました。あとで田丸先生のところにお伺いします」
合間に通りがかった男性看護師と、そう会話を挟みながら、まず宮脇さんへ医療消耗品についての営業を始めた。
ここの病院は、親切丁寧だと患者さんからの評判がいい。
それは営業マンである自分に対しても同じで、年配の看護師さんから若い准看護師さんまで、いい人ばかりだから非常に仕事もしやすい。
お喋りを交えながら仕事をする、なんて他の病院より気を許してしまいそうになるくらい、ここでの営業はちょっと楽しみだったりする。
……ただし、ひとりの男の存在を除いて。