俺様Dr.に愛されすぎて



それから数時間後、パンフレット作りを切り上げ、外回りのため会社を出た。

今日は先日導入した機器についてのヒアリング。各病院を回って、最後に立ち寄ったのは当麻総合病院だった。



今日は5階の循環器科……。

病院内を足早に歩き、5階に向かうべくエレベーターに乗り込んだ。

ひとりになった瞬間、お腹はぐううと音を立てる。



「……はぁ、お腹空いた」



お昼、パンフレット作りでご飯食べる余裕なかったからなぁ。

さすがに夜まで持ちそうにはないし、帰りにコンビニでも寄っていこうかな……。


そうお腹をさすると、突然背後から「ブッ」と笑い声が聞こえた。



だ、誰かいた!?

てっきり誰もいないとばかり思っていた私は、驚き勢いよく振り返る。



するとそこにいたのは、なんと真木先生。

私より先に乗り込んでいたのだろう彼は右手で口もとを抑え、必死に笑いをこらえている。



「まっ真木先生!?」

「藤谷……お前、すごい音したな。腹になにか飼ってるのか?」



こらえきれず「ぶふっ」とまた笑いをもらしながら言う真木先生に、恥ずかしさから顔が赤くなる。



「すみませんね、すごい音で!お昼食べ損ねててお腹空いてるんです!」



ふん、と顔を背けていうと、彼は少し黙ってから私の背後に立ち壁に手をつく。

せまいエレベーター内で角に追い込むようだ。

背中にあたる彼の体に、近い距離を感じて緊張してしまう。



ち、近い……。

つい俯いてしまうと、突然、不意打ちに彼は私のうなじにちゅ、とキスをした。




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