俺様Dr.に愛されすぎて
「……答えろよ」
低い声でささやいて、彼の顔がより近づく。
そして唇が触れかけた、その時。
「真木先生、いらっしゃいますー?先ほどの患者さんのことで確認したいことがあるんですけど」
看護師さんの声とともに、コンコン、とドアをノックする音が響いた。
その声にふと我にかえると、私は真木先生の体をドンッと突き飛ばし、席を立つ。
「そ、そろそろ行かなきゃ!ケーキごちそうさまでした!」
それだけを早口で言うと、鞄を掴みいきおいよく部屋を飛び出した。
ドアの目の前にいた看護師さんの「きゃっ!?」という、まさか私がいるとは思わなかったのだろう驚きの声を聞きながら。
手を掴んだ彼の手の感触と、見つめる眼差し、ささやく声。
ひとつひとつが、全身に絡みついて離れない。
彼の告白に対しての返事なんて、そんなこと聞かれてもわからないよ。
けど、ひとつだけわかる。
ドキドキしてるか、に対しての答えは、耳まで熱く赤くなる、この顔ひとつでわかりきってる。
ドキドキしない、わけがない。
その熱は彼にだから感じているのかは、まだわからないけれど。
「……頬、あつい」
熱よ、冷めろ。冷めろ。
何度も心で繰り返すのに、真木先生の眼差しが記憶から消せず、この体温をいっそう上げた。