俺様Dr.に愛されすぎて
4.車の中で交わされる
夢に、彼が現れた。
『藤谷』
そう名前を呼んで、近づいて、私の頬にそっと手を触れる。
そして唇は、重なろうと距離を詰めて……。
「はっ!!」
その瞬間目をさますと、そこにはいつも通りの白い天井が広がっている。
ガバッと勢いよく体を起こせば、1LDKの部屋には当然自分ひとり。
先ほどまで目の前にいた彼は、夢だったのだと気づいた。
「ゆ、夢……」
なんて夢、見てるんだか……。
寝癖頭を抱えれば、頬は熱い。
5月の連休明け、月曜日の朝。
いつも以上に憂鬱そうなサラリーマンたちに囲まれて、私は電車に乗り込んだ。
電車内の、ドア上にある画面には『本日の運勢』と星占いの映像が流れている。
【今日の1位は、天秤座!
思わぬ幸せに出会える1日。ラッキーアイテムは、水!】
お、天秤座が一位だ。
占いを信じているわけではないけれど、自分の星座が一位となれば当然嬉しい。
なにかいいことあればいいな、とどこか期待に胸を膨らませる。
今日のスケジュールは、午前はオフィスで午後から外回り……数カ所回って、当麻総合病院にも行かなくちゃ。
不意に真木先生の姿を思い浮かべて、恥ずかしくなってかき消した。