俺様Dr.に愛されすぎて
その時だった。
「だーれだ」
声とともに突然視界がなにかに覆われたように真っ暗になる。
一瞬「わっ」と驚くけれど、少ししてみればそれが手であることに気付き、すると自然と誰がしているかも想像がついた。
「……離してください」
冷めた言い方でその骨っぽい手の甲をぎゅっとつねる。
すると「いっ!」と痛そうな声とともに、いとも簡単に視界は開かれた。
呆れた顔で振り向けば、そこには、痛そうに右手をさする白衣を着たひとりの男性の姿がある。
左で分けた、少し長めの茶色い髪。上下青いスクラブに身を包み、白衣を羽織った彼。
その胸元には『内科 真木梓』の名前と顔写真という名札が提げられている。
小さな顔に少したれ目がちな二重瞼。色素の薄い茶色の瞳と高めの鼻が、日本人離れした印象を感じさせる。
身長180センチはあるだろう、背の高い彼を見上げて、私は「はぁ」と眉間にシワを寄せた。
「真木先生、何度言えば分かるんですか。あなたの行為はセクハラです」
「セクハラだなんて失礼だな。俺は藤谷がかわいいからつい……」
「はいそういう発言もセクハラですー!」
ビシッと指差し指摘をする私に、彼は「なんでもセクハラかい」と苦笑いを見せる。