俺様Dr.に愛されすぎて
「そもそも、今私仕事中なんです!邪魔しないでください!」
「偶然だな、俺も仕事中」
「でしょうね!」
にこりと笑顔を見せながら言われ、つっこまずにはいられない。
そんな漫才のような私たちのやりとりに、宮脇さんたちはおかしそうに笑う。
「ま、そういうつれないところもかわいいけど」
そう言いながら、彼は私の黒い髪にそっと触れる。
少し絡まってしまっていたのだろう、細長い指先は毛先を優しくほどくと手を離した。
不意に近づいた距離に、胸は小さく音を立てた気がするけれど、気づかないフリで顔を背けた。
「別に、真木先生に言われても嬉しくないです」
「はは、ひどい言われ方だな」
話していると、廊下の方から「あれー?真木先生はー?」と彼を呼ぶ看護師さんの声が聞こえてくる。
それに応えるように彼はその場を歩き出した。
真っ白な廊下を、長い足で静かに歩く。
たったそれだけの動作が妙に美しく、周囲の人々の視線が彼の方へと自然に向いた。
……相変わらず、見た目だけはいいんだから。中身は軽いけれど。