俺様Dr.に愛されすぎて
「……わけわかんない」
「え?」
「私は真木先生の気持ちがわかんない!!」
突然の大きな声に、運転手さんが驚いた様子でミラー越しにこちらをうかがう。けれど、それすら関係ない。
「本気だって言ったり、なのに合コンに行くことはなにも言わなかったり、女の子と仲良くしたり……もう!なんなの!」
抱えていたモヤモヤとした気持ちをそのままぶつけると、真木先生はなにかを少し考えてから、呆れたようにため息をつき、頬杖をついて窓の外を見た。
「なんなの、は俺のセリフ」
「え?」
「藤谷からの電話嬉しかったのに、合コン持ちかけられるし。他の男に触らせるなって言ったのに、簡単に触らせるし」
背けられたままの顔に、その表情は見えない。
けれど苛立った声色から、彼が不機嫌なのだろうことを察した。
「それは……下手に拒んで、面倒なことになってもいやだったし」
女の子に笑う真木先生へのあてつけ、なんて言えなくて。言い訳のような言葉に逃げる。
そんな私にも、彼はまだ窓の外を見つめたまま。
「……俺との距離も、面倒なことになるのがいやだから拒まないでいるだけ?」
ぼそ、とつぶやくように言った。
その言葉から、彼の気持ちが少しだけわかった気がした。