俺様Dr.に愛されすぎて
私の気持ちを、確かめているのかもしれない。
合コンを許して、他の女の子と笑って、私がどう出るか。どんな気持ちを彼に抱くのか。
どうでもいいから、じゃなくて。思う気持ちがあるから。
きっと、私の抱いた感情は、その心が願う通りの答え。
どうしてこんな気持ちになるのかはわからない。
だけど、ここで『そうです』なんて突っぱねてはいけない気がした。
今は、今だけは、素直に。
彼のジャケットの袖をぎゅっと握る。
「……べつに、そういうわけじゃないです」
面倒になるのがいや、とか、そんな理由でキスなんて受け入れない。
本当にいやだったら、きっと、もっとちゃんと拒んでる。
だから、そんなこと、言わないで。
その気持ちを込めて、手に力を込めた。
それを感じ取ったかのように、彼はこちらに目を向ける。
しっかりと交わる視線に、胸がまた、いつもより強く揺さぶられた。
「俺の気持ちがわかんないとか言ってたけど。俺の気持ちは、ずっと伝えてる」
「え……?」
「藤谷のことが好きだ。だから、お前の気持ちを知りたくて試すようなこともする。些細なことで喜びもするし、苛立ちもする」
低い声はそう囁いて、揺れる車の中でそっと距離を詰める。
「……いい加減、わかれよ」
そして私の頬に手を添え、ゆっくりと唇を重ねた。
唇は、触れて、離れて、また深く口付ける。
ミラー越しにこちらをうかがう、運転手さんの視線を感じる。
けれど、そのキスを拒むことはできなくて、初めて、求めるかのように、彼のシャツの胸元をぎゅっと握った。
彼が誰とどうなろうと、どうでもいい。関係ない。
さっきまで、何度も心の中で繰り返していた言葉。
だけど今、それはただ言い聞かせていただけに過ぎないのだと思い知った。
本能のまま、彼の熱を求める。
私だけを見ていてほしい。
そう願う、愛しさと嫉妬が入り混じる心に。