俺様Dr.に愛されすぎて
「今日は無理せず極力早く帰ってゆっくり休めよ。営業部はお前頼りなんだ、無理して長引かれると困るからな」
部長はそう私の肩をポンッと叩く。
それはつい強がってしまう私を休ませる、気遣いのような言葉。
普段は早く結婚しろだのなんだのうるさいけど、こういうところはいい人なんだよね……。
「でも体調悪い時にひとりはつらいしな、やっぱり結婚は早くしたほうがいいぞ!」
……いや、前言撤回。やっぱりただのうるさい人だ。
「大丈夫ですよね、藤谷さんには愛しの真木先生がいますもんね~」
「は!?」
い、愛しの真木先生!?
「お、なんだ。ついに彼氏ができたのか?」
「はいっ、超イケメンのお医者さんで~、喧嘩するほどなんとやらって感じですごく仲良しなんですよ。この前の合コンも、結局真木先生は藤谷さん追いかけて帰っちゃったって女の子が拗ねてましたし」
うふふと笑って言う深田さんに、余計なことを、と睨むけれど彼女は気にする気配もない。
「あっどうせなら今日真木先生に診察してもらったらどうですか?真木先生のことだから体の隅々まで診察してくれますよ~」
「なっ……ない!ないから!ありえないから!!」
真木先生のことを『彼氏』、さらに体の隅々まで、なんてひやかされ……私は全力で否定すると、荷物をまとめ「外回り行ってきます!」と部屋を出た。
おかしそうに笑う二人の声を背中で聞きながら。
ったく、深田さんってばからかって……。
ていうか彼女こそ、この前の合コンの成果はどうだったんだろう。お返しに聞き返せばよかった。
『真木先生のことだから体の隅々まで診察してくれますよ〜』
思い出す先ほどの深田さんの言葉に、ボッと頬が熱くなる。
もう、そんなわけないじゃんか!
それに真木先生に診察されるなんて絶対にごめんだ。
なんとしても今日も普通に仕事をやりきって、なるべく早く帰宅して休む。うん。
そう心に決めると、私は早足で車に乗り込んだ。