俺様Dr.に愛されすぎて
そして、それから車で担当先の病院を数件まわり……当麻総合病院にやってきたのは16時を過ぎた頃のことだった。
熱があるといっても意外と大丈夫なもので、普通に運転し、普通に外回りもできている。
当麻総合病院が終わればこのまま会社に戻れる。
よし、もうひと頑張りだ。
気合を入れ、広々とした病院内を歩いていく。
「お世話になります、新和メディカルです」
いつも通りの表情で内科の受付に声をかけると、宮脇さんがこちらを向いた。
「あ、藤谷さん。お疲れ様~……ってあら?顔色悪くない?」
「あはは、そうですか?いつも通りですよ」
営業先で心配をかけるのもよくないし、と笑顔をつくろう私に、宮脇さんは「そう?」と疑わしい目を向けた。
それに気づかぬふりで、いつものように資料を取り出す。
「今日は医療消耗品についてご紹介させていただければと思うんですが……」
そして、パラパラと資料をめくった、その時だった。
突然クラっと視界が歪んだかと思えば、足に力が入らなくなってしまい、ゆっくりその場にうずくまる。
「えっ……藤谷さん?大丈夫?」
「すみ、ません……力、入らなくて……」
どうしよう、目が回る。
立ち上がらなくちゃ、仕事をしなくちゃ、そう思うのに力が入らない。
私の異変に気付いた周囲が、どうしたのかとざわつく声が聞こえる。
気持ち悪い、クラクラする、寒い、苦しい。
「藤谷さん!?しっかり!藤谷さん!!」
宮脇さんに答えなくちゃと思うのに、声が出ないまま意識が遠くなっていく。
ダメ、しっかりしなくちゃ、いけないのに……。