俺様Dr.に愛されすぎて
あぁ、限界がきてしまった。
大丈夫だと、思ったのに。そんな気がしていただけだった。
部長にも無理しないようにって言われていたのに。
営業先で倒れたなんて知られたら、怒られちゃうかな。
そんなことを考えながら、熱の中、誰かに包まれるのを感じた。
たくましく、力強い腕。少しひんやりとした体温。
遠くに聞こえる低い声と、鼻をくすぐる香り。
……この香り、知ってる。
石鹸のような爽やかさのある、安心する香り。
これまで何度もかいだことがある。
真木先生の、香りだ。
『……藤谷』
夢の中、彼は私の名前を呼んで、額に小さくキスをした。
熱が出ている時にまで彼の夢を見るなんて、悔しいと思う。
けれど、その声と唇が愛しく思えてしまうなんて。
「……ん……」
そっと目を覚ますと、硬いベッドの上、柔らかなシーツに包まれていた。
まだ少しボーッとする頭で、横になったまま目だけを動かし辺りを見回せば、白いカーテンに囲まれたここが、病院内の処置室なのだろうことがわかった。
独特の薬品の匂いが鼻から入り込む。
けど、なんで私ここに……?
「あっ、藤谷さん。目、覚めた?」
「宮脇さん……」
「突然倒れちゃってびっくりしたわ~。やっぱり熱あったのねぇ。39度だって」
宮脇さんはふふ、と笑うと私の額の上に乗せられた濡れタオルをそっと手に取る。