俺様Dr.に愛されすぎて
「まだ寝てろ。会社には連絡しておいたから」
「えっ!?」
「部長さんが出て、今日はタクシーで直帰するように、とさ」
言いながら、そっと手は離された。かと思えば、その手は突然私の左頬をむにっとつねる。
「ひゃ!?」
な、なにをいきなり?
驚く私を見る彼の目は不機嫌そうだ。
「いきなり倒れたかと思えば、39度ってなんだよ。このバカ」
「す、すみません……ご迷惑おかけしました」
「本当だよ。心配させやがって。熱があるときは無理せず休む、もしくは早帰りする。わかったか」
きっと、すごく心配してくれたのだろう。
叱るように言って、その手は頬からそっと離される。
「けど、本当にすみませんでした。お仕事の邪魔しちゃって」
「別に、俺はひと通り仕事終わってあがる時間だったからいいけど」
そう言いながら、真木先生はベッドに腰を下ろし、私の頭をよしよしと撫でた。
「けど本当に申し訳ないって思うなら、早く治して元気になれ」
早く、元気に……。
その優しい言葉と大きな手が少し嬉しくて、小さく頷いた。
「ちなみに、風邪は人に移すと早く治るらしいぞ」
「へ?人に?」
って、どういう意味?
キョトンと首をかしげると、真木先生は不意うちで顔を近づけた。
ベッドに手をつき重心をかけると、パイプベッドがギッと軋む。
それと同時に、私の顔が彼の瞳に映り込んだ。