待宵草~羽賀夏貴~
待宵草~羽賀夏貴~
「あの!これ!落としましたよ!」
後ろから綺麗な女の声がする。最初それが俺に向けられた声だということに気づかなかった。
というか周りを気にしていなかった。今日購買で何のパンを買おうかなとか今度の休み何して遊ぼうかなとか下らないことを考えながら教室へ歩いていた。
だから教室の前で肩を叩かれたときびっくりした。心臓が止まるかと思った。
彼女は肩で息をしながら言った。
「これ、あなたのじゃないですか?」
そう言って安っぽいラバーストラップの付いた小さな鍵を差し出してくる。
確かにその安っぽいラバーストラップには見覚えがあった。
慌ててポケットの中を確認する。
無い。ポケットに入れておいたはずのチャリのポケットが無い。
「違いますか?」
彼女が聞いてくる。余り感情を乗せるタイプでは無いのかその声からは何も感じ取られなかった。
「あっ、合ってます。ありがとう。」
俺が慌てて言った瞬間さっきまで無表情だった彼女の顔がふっと和らいだ気がした。
「良かった。」
そう言った気がした。
「じゃあ、失礼します。」
彼女はそれだけ言うと走り去っていった。
それが葉山と俺の出会い。そして失恋の決定した恋のはじまりだった。
後ろから綺麗な女の声がする。最初それが俺に向けられた声だということに気づかなかった。
というか周りを気にしていなかった。今日購買で何のパンを買おうかなとか今度の休み何して遊ぼうかなとか下らないことを考えながら教室へ歩いていた。
だから教室の前で肩を叩かれたときびっくりした。心臓が止まるかと思った。
彼女は肩で息をしながら言った。
「これ、あなたのじゃないですか?」
そう言って安っぽいラバーストラップの付いた小さな鍵を差し出してくる。
確かにその安っぽいラバーストラップには見覚えがあった。
慌ててポケットの中を確認する。
無い。ポケットに入れておいたはずのチャリのポケットが無い。
「違いますか?」
彼女が聞いてくる。余り感情を乗せるタイプでは無いのかその声からは何も感じ取られなかった。
「あっ、合ってます。ありがとう。」
俺が慌てて言った瞬間さっきまで無表情だった彼女の顔がふっと和らいだ気がした。
「良かった。」
そう言った気がした。
「じゃあ、失礼します。」
彼女はそれだけ言うと走り去っていった。
それが葉山と俺の出会い。そして失恋の決定した恋のはじまりだった。