あなたと私の関係
「ご、ご本人、ですか……?」
目の前には、綺麗な顔。
雑誌の表紙と同じ顔が、そこにはあって。
ファンじゃなくても、息をするのを忘れるくらいかっこいい。
「雨宮綾は芸名だ。お前の母親が考えた」
「えぇ!?」
「昔世話になった恩人みたいなもんだ。だから今回の話も聞いてやった。
…けどな、恩があるのは菜穂子に、だ。お前にじゃない」
切れ長の瞳は、酷く冷たい。
雑誌の中みたいに、キラキラなんてしてない。
「お前が俺のファンで、それを知った菜穂子が出張を口実にお前を俺に押し付けた。日本に1人で置いておくのは不安だし、大事な娘にも喜んでもらえて一石二鳥ってか。迷惑な話だ。」
「ちょっと待ってください!私は雨宮さんのこと」
「うるさい。金は出してやるから、どこか別のところで暮らせ。ファンのガキと同居なんて、まっぴらだ」
「でも私、ここ以外に帰る場所なんてなくて」
「母親がいなくても、父親がいるだろう。何とかしてもらえ」
「っ、」
父親、という言葉に胸がぎゅっとした。