あなたと私の関係
お父さん、お母さん、美月、誰でもいい。誰でもいいから、助けて。
怖くて今にも泣きそうで、ぎゅっと目を瞑った、そのとき。
「……おい」
背後から、ひどく不機嫌そうな声。
なんだか、聞いたことがあるような無いような。
「……どこ行ったかと思えば、こんな所にいたか」
振り返ると、息を切らせた雨宮さんの姿。
一応変装のつもりなのか黒のサングラスをかけ、長い髪は後ろで1つにまとめている。
走ってきたらしく、頬を伝う汗をTシャツの裾でぐいっと拭う姿がまるでドラマのワンシーンのよう。
「なにオニーサン。この子の知り合い?」
「だったら何だ」
「いやぁ、俺今からこの子と遊ぶ約束しててさぁ。つまりオニーサンはお呼びじゃないってわけよ」
金髪男が相変わらずヘラヘラしながら雨宮さんに近付いて行き、ジリジリと距離を詰める。
「だからさぁ、さっさと消えてくれない?俺意外と気が短いんだよね」
「……奇遇だな」
「あ?」
「俺も気が短い」
ーーダンッ!!
「きゃっ…!」
雨宮さんの長い腕が金髪男の胸倉を掴んだと思えば、そのまま勢いよくブロック塀に叩きつける。