あなたと私の関係
何とか雨宮さんの腕の中から脱出を試みたものの、健闘むなしくリビングの扉がバンッ!と勢い良く開いてしまって。
「ごめん綾、遅くなった!とりあえずポカリと薬と冷えピタと吸うタイプの栄養ゼリー買っ、て…………」
後ろから、女の人の声。
状況が理解できないのは私だけではないらしく、声の主も言葉を失ってしまったようで。
「ちょっと!!!!あなた何してるの!?!?」
「わっ」
少しの間の後、今度は肩を掴まれてべりっと引き剥がされた。
「なにあなた、高校生!?綾のファンね!?ストーカーも不法侵入も立派な犯罪なのよ分かってるの!?」
「いや、あの、」
「言い訳は聞きたくないわ!!警察呼ばれたくなかったら今すぐここから」
「…………睦月」
栗色の綺麗な髪を振り乱しながら、私の肩を掴んで前後左右にぐわんぐわんと揺する美女。
ただでさえバッチリメイクで大きな目をかっ開いて鬼の形相の彼女は、とても私の話なんて聞く耳を持ってくれそうにないな、と思ったのはどうやら雨宮さんも同じらしく。
「こいつは不法侵入でも、ストーカーでもない。心配いらん」
ゆっくりと起き上がり、私の代わりに弁解してくれるみたいだ。
「心配いらないって言ったって、この子今綾の寝込み襲おうとしてたじゃない!!気付いてないの!?」
「今のはそんなんじゃない。俺が無理矢理抱き寄せた結果だ」
「はぁああぁ!?抱き寄せたってあんた、何言ってるか分かってんの!?」
「…………睦月。お前はもう少し音量を下げろ。詳しく話すのはそれからでも遅くない」