あなたと私の関係



後ろにはうんざりしたように頭を抑える雨宮さん。正面には形のいい眉を釣り上げて大爆発中の美人さん。




雨宮さんの仲裁(?)のお陰でいつの間にか美人さんの揺すり攻撃から逃れたものの、2人の真ん中に挟まれた私はおろおろするしかない。




「だから、こいつは知り合いからの預かり物だと言っているんだ。やましいことは何も無い」



「あのねぇ、1回り以上年下とはいえ年頃の男女があんなに密着してるところ見せられて信じられるわけないでしょう?」




「じゃあどうすればいい。生憎だが、俺は今更こいつを放り出す気は無いぞ」



…なんか、意外。



散々人のことをガキだとか不良娘とかお母さんからの頼みだからしょうがない、とか言っといて、こうしていざとなったらちゃんと庇ってくれるんだ。



私はてっきり面倒なことになったらさっさと追い出されると思ってたから、嬉しいような、驚いたような、変な感じ。




「…で?大体話は分かったけど、あなたはどうなの?」



「へ?」



「あなた、綾のファンなの?それとも1人の男としてもう好きなの?綾がどんな仕事してるか本当にちゃんと分かってる?家政婦だかなんだか知らないけど、綾はウチの大事な商品よ」



さっきまで大きく開いていた目を今度はこれでもかってくらい細めて、まるで私を品定めするような視線を向けてくる美人さん。




「…申し遅れましたが私、デビュー当時から雨宮綾のマネージャーをしております、睦月京香(むつき きょうか)といいます。あなたは?」



質問攻めにあい目をぱちくりさせていると、答えようとしない私に痺れを切らしたのかローテーブルの上にすっと名刺を差し出され、初めての経験に思わず背筋が伸びるのが自分でもわかった。



「な、七篠高校1年の、久世彩羽です。雨宮さんのファンなのは友人で、私自身はファンというレベルでは…。」



「………まさかもうその友達とやらにこのこと喋ったんじゃないでしょうね?」




「おい、睦月!」




びくり、と思わず肩が上がったのは、私だけじゃない。




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