あなたと私の関係
「……手料理作ろうっていうなら無駄だからね」
「え?」
「食べないわよ、あいつ。男のなら分からないけど、女の手料理なんてまず箸もつけない」
さっそく取り掛かろうとエプロンをつける私に睦月さんが言う。
「トラウマがあるのよ。だからこっちも心配してやってんのに…はぁ、」
鬱陶しそうに長い前髪をかきあげた睦月さんの深いため息が広いリビングに沈む。
「…とにかく、間違っても週刊誌とかにだけは撮られないでよ。会見にでもなったら…あぁ、もう。考えるだけでこっちまで頭痛くなりそう」
ネイビーのスーツのポケットの中から車のキーを取り出し、そのままこちらを振り返ることなく部屋を出ていく睦月さんの言葉にまたひとつ疑問が増えた。
トラウマって、なんだろう。