あなたと私の関係
「真っ暗な部屋の中で、その女が手に持っていた携帯の画面の明かりだけがぼんやりと浮かんでた。よくよく見てみると、中身は寝ている間に撮ったであろう俺の写真だらけ。
まるで添い寝しているかのように撮ったものまであったな」
「………」
「それで泣きながら言うんだ。"亜弥が離れていくのが寂しい。この写真をばらまかれたくなかったら、俳優をやめて"って」
その時のことを思い出しているのか、どこか遠くの方を見つめる雨宮さんの瞳。
時折ベッドライトの光を含んで切なく揺れるさまが、きれい。
「…それから、人の手料理に抵抗がある。だから、別にお前の作った飯が嫌なわけじゃない。ただ」
「…さみしい」
なんて悲しい話だろうと思った。
悲しくて、辛くて、くるしくて、さみしい。
半同棲するくらいには信じて全てを任せてきた相手の涙なんて、本当は見たくなかっただろうに。
「…そこは普通怖い、だろう」
ふ、と伏し目がちに笑う雨宮さん。
「だってその人、ずっと雨宮さんのこと応援してくれてたんですよね?そりゃ睡眠薬は怖いですけど、そんな人を自分がそうさせてしまうって、私ならさみしくて、辛いです」
「……お前は本当に、変わっているな」
「う、わ」
くしゃりと頭をかき回す、雨宮さんの大きくて骨ばった手。
「…あぁ、そうだ。そういえば、薬があったか」
「あ、飲まれますか?じゃあとりあえず睦月さんが買ってきたくれたゼリーを…」
「いや、いい。それよりも、さっさとそれを寄越せ」
「え、それって」