あなたと私の関係
雨宮さんとは雰囲気の違う、無造作にセットされた焦げ茶色の髪。
スポットライトに照らされて部長さんを縁取る線がまるでオーラみたいに輝いて見えて、思わず息を呑む。
その後も部長さん以外の部員さんが次々と出てきて物語は進んでいく。
内容はシンデレラに似てるけれど、みんな衣装はドレスやタキシードではなく、至って普通の洋服で。
そしてそれ以外にも一つ気になることがあった。
「主役がいない…?」
「その通り!」
どっからどう見ても主役が見つからない。
部長さんはシンデレラでいう王子様役みたいだけど、肝心のシンデレラ本人がいないのだ。
話の流れを止めないためかナレーションの人がセリフを読んではいるけれど、舞台の上には姿がない。
どうしてだろうと首をかしげていると、再び部長さんが目の前に現れて。
「うちの姫が今骨折しちゃっててね」
「ええっ」
「でももうすぐ文化祭でしょ?だから大ピンチってわけ」
やれやれとまるでアメリカのホームドラマのようにポーズをとる姿はさすが演劇部といったところか。
「そこで!今日のお詫びの話なんだけど」
にこっと微笑んだかと思えば、部長さんは私の目の前に跪いて、とんでもないことを口にした。
「君に、その穴を埋めてほしいんだ」