あなたと私の関係
穴を埋めるとは、つまり。
「私がこのお話の主役を…ということですか?」
「そうそう」
「いや!!私ド素人なので!!」
演技なんてとんでもない。
しかも主役なんて…!
「素人だなんてみんなそうだよ。ちょっとかじってるだけだし」
「いや、私はかじってもないので、本当にそれだけは…」
「えぇ。俺にお茶ぶっかけたのに?」
うぅ。
さっきはいいよ、なんて言っていたくせに、ずるい。
「お詫びしてくれるって言ってたよね?」
「う、裏方で勘弁してもらえませんか?」
「裏方も裏方で代わりがきかないんだよね。大事なシーンでスポットライト外されても困るし」
「…確かに」
「それよりは身一つで飛び込める表の方が楽って言っちゃあ楽だと思うんだけど…ね?」
「っ、」
まるで本物の王子様みたいに私の手を取って上目遣いで見つめられると、もう嫌とは言えず。
「御手柔らかに、お願いします…」
「よし、そう来なくっちゃ!」
待ってましたと言わんばかりに立ち上がった部長さんはそのまま私の手を上下にぶんぶんと振る。
「俺、演劇部部長の紫乃圭吾(しのけいご)!圭吾でいいから」
「私は1年の久世彩羽です。ご迷惑おかけするとは思いますがどうぞよろし」
「彩羽ちゃんね!堅苦しい挨拶は後でいいから、早く練習始めるよ!」
「えっ、ちょ、うわぁ!?」