あなたと私の関係





「本当に私に主役なんか務まりますかね」




初日とはいえ、ズタボロだったと思う。




今まで教科書の音読くらいしか経験のない私の演技はそれはもうひどいもんで、自分でも落ち込まざるを得ないというか。



文化祭まで2週間くらいしかないのに、こんな調子で間に合うのかな。




「大丈夫。最初はみんなそうだって」




がっくりと肩を落とす私の背中に、ぽん、と優しく圭吾先輩の手が触れる。




「それに俺だって誰でも良くて彩羽ちゃんのこと連れてきたわけじゃないんだし」



「…そうなんですか?」




私はてっきりいい口実ができたくらいにしか思われていないのかと思っていたけど。





「そりゃあ大事な本番だからね。絶対成功させたいじゃん?ほら、俺部長だから尚更ね」




「だったら、尚更なんで私なんか」




「一生懸命俺のシャツ拭いてる姿見て、あ、この子なら役として好きになれそうだなって、直感ってやつ?」




「そう、ですか」





何だかよく分からないけど、ちゃんと選んでくれたことだけは分かった。





「では、私はこの辺で」




さすがに雨宮さんのマンションまで送ってもらうわけにもかいかないので、近くの公園で圭吾先輩と別れる。




スマホを開けば、もうすぐ20時。




やばい。いくらなんでも遅すぎたかも。





連絡を入れてるとはいえこんな時間に帰るのは初めてで、恐る恐る玄関の鍵を開けると明かりがついていて、やっぱり雨宮さんは帰ってきているようだ。









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