あなたと私の関係
最近、犬を預かった。
とは言っても、本物ではない。
「今日は、オムライスとコンソメスープに、サラダです!」
まるでじゃじゃーん、と効果音でも聞こえてきそうな勢いでそれらを机に並べるこいつは、昔の恩人の娘。
「とりあえず無難にケチャップにしてみたんですが、デミグラスソースとかの方が好きですか?」
「ホワイトソースも悪くないと思うぞ」
「はい!では、次はそれにしますっ」
決して愛想がいいとは言えない俺の返事を聞いて、それはそれは満足そうに笑う変なガキ。
顎のラインで切りそろえられた髪は今どきの若者にしては珍しい艶のある黒。
時々丁度いいところにあるので手を置いてみるが、そこそこに手触りもいいと来た。
同じ家に住んでいるので当たり前だが、ふとした瞬間に同じシャンプーの匂いがして、時たまドキリとさせられる。
「うん、うまい」
そして何より、飯がうまい。
なんだかんだで根負けして食うことになったが、これは嬉しい誤算だった。
高校生でこうも手際よく完成度の高いものを作れるのは、きっとそれなりにこいつが苦労しているからだろう。
「ふふ、よかったです」
俺が一口口に運んだのを確認してまた嬉しそうに笑う姿は、正直可愛い、と思う。