あなたと私の関係
「………スキャンダルだけはやめてよね」
「分かっている。で、答えはどうなんだ」
「まぁ、友達なら何とも思わないわよ。それが本気なら断るし、ふざけてるならふざけてるで笑い飛ばすし」
「そうか」
「でもまあ、好きな人にそんなこと言われて冗談でした、は怒るんじゃないの」
好きな、人。
「……いや、ないな」
恋がなにかも分からんと首を傾げていた小娘が、俺を好きなどと言うわけがない。
第一、俺よりもあの圭吾とかいう先輩の方がそれに近いんじゃないのか。
「くだらん」
まるで太陽に雲がかかるように、心にもやが浮かぶ。
あんなませた台本を演じる相手がヤツだということも、小娘が妙にヤツに心を許しているということも。
俺は本名どころか芸名で呼ばれているというのに、ヤツは名前で呼ばれているだとか。
ひどくどうでもいい些細なことが気になって、余計虐めたくなるんだ。
俺のことだけ考えていればいいのだ、と。
「…飼い犬が他人に懐くと、こうも嫉妬するものか」
今まで俺に尻尾を振っている姿しか知らなかったものが、知らない間に赤の他人に餌付けされていたような。
…いや、違うか。
俺は俺といる小娘しか知らなかったんだ。
外で何を見て、誰と話して、何を思い、どういう風に笑うのか
ただ知らなかっただけの話。