あなたのことは絶対に好きになれない!

男性が苦手ということ以外はこれといった弱点もなく、毎日を平穏に過ごしてきた。


それなのに、まさか大っ嫌いだったオウスケくんと再会し、脅され、付き合うことになろうとは⁉︎




「俺、ビール頼むけど、クミは?」

動揺を隠し切れない私とは打って変わって、オウスケくんはさっきから平然としている。


「私はいいです……」

「そう?」

やっぱり平然とそう答え、彼はタッチパネルで生ビールを一つ、あとは適当におつまみ系を注文した。

正直、胃が何も受け付けそうにない。


しばらくして、注文したものたちが運ばれてきた。


「クミも食えよ」

「いいです……」

「ああそう」

素っ気ない、とまでは言わないけど、私にそこまで興味があるとは思えない。
でも、私のことが好き……ってことなんだよね。



「あの……」

「何?」

枝豆を口に放り込みながら、オウスケくんは私を見つめる。


「お願いが、あるんですけど……」

「ん?」


オウスケくんと付き合う、ということには今の時点では抗えそうにない……。
別れる方法はおいおい考えるとして、ひとまず……



「付き合うこと、他の人には内緒にしてください」

オウスケくんはオフィスの王子様のようだし……彼と恋人同士であることは、社内では絶対に知られたくない。知られたら、彼に憧れる女性社員にどう思われるか不安だから。


そのことも併せて彼に伝えると。



「あのさ」

「はい」

「お前は俺にお願い出来る立場か?」

「え?」
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