あなたのことは絶対に好きになれない!
ドキドキさせないで
月曜日。いつも通りの時間に出勤すると……。
「あ……」
私の声に反応して、その人は振り返る。
「あ、クミ」
周りに誰もいないから、オウスケくんは私のことを〝クミ〟って呼んだ。
営業室の入り口でバッタリ出くわし、ほんのちょっと気まずいけど、
「あの、金曜日はご迷惑をお掛けして本当にすみませんでした。そして、ありがとうございました」
きちんと謝らないといけないと思った。
原因はどうあれ、介抱してもらったのは事実だ。
オウスケくんは特に気にした様子もなく、「ああ、別に」と答える。そして意外にも「俺も悪かったし」と言ってくれた。
「いえ、私の自己管理不足でした……」
「飲ませたの俺だし。深央にも怒られたわ。
まあなんていうか……嬉しくて?」
「え?」
「クミと再会出来たことが嬉しくて。それでついつい酒飲ませちまった」
彼は口元を意地悪く釣り上げてそう言う。
なのに……あれ?
今私……
ちょっと、ドキッとした?