あなたのことは絶対に好きになれない!
「……オウスケくんは、本当によく分からない」

私がそう言うと、彼は「何が?」と首を傾げる。


「だって……私の困ってる顔を見るのが好きって言ってたくせに、私が困ってる時に助けてくれた……。朝比奈さんからも、田口さんからも」


彼の矛盾とも言える行動を指摘したつもりだったけど、彼自身はそれを聞いて何でもないような表情で、


「ああ、そんなこと?」

と返してくる。


そして。


「そんなの、簡単なことだ。




クミを泣かせていいのは世界で俺だけ。俺以外にクミを泣かせる奴は許さない」


そう言って、彼は私に顔を近付けてキスをしようとしてきたので「ま、待ってっ」と、彼の胸板を押してそれを阻止した。


「ダメだった? カッコいい台詞言った後ならキスさせてくれるかと思って」

「カッコいいっていうのは自分で言ったらダメ! それに、カッコ良くなんてやいんだから! 私にとっては恐怖でしかないよ!」

「あ」

「何」

「ようやく敬語なくなった」


あ。確かに今、オウスケくんに対してタメ口で話しちゃった。思わずツッコミを入れたからつい、っていう理由だけど。


……だけど彼は、嬉しそうに笑った。

子供みたいに。
小学生時代と変わらない無邪気な笑顔で。


……トクン。

心臓の奥が、温かいものに包まれた気がした。
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