あなたのことは絶対に好きになれない!
その後、同じタイミングで食堂を出て、エレベーターに乗り込む。

エレベーター内には他には誰もいなくて、二人きりだ。


エレベーターに二人きりなんて、大したことじゃないはずなのに妙に意識してしまうのは、さっきオウスケくんがあんな表情見せるからだよ……。


そんなことを考えていると、隣に立つ彼に、そっと手を握られる。


「へっ?」

突然のことに驚いて彼の顔を見上げるけど、彼は何てことのないようにまっすぐ前を見つめながら、何も言わない。


ふりほどきたければ多分簡単にそう出来るほど、優しい力で握られている。


……だけど私は、彼の手をギュッと握り返してしまった。


今度は彼が私に振り向くのが分かった。だけど私は下を向いて、顔を合わせなかった。いや、恥ずかしくて合わせられなかった。



エレベーターはすぐに一階に到着し、扉が開くのと同時に手を離した。

一階の廊下には多くの社員が行き交っているのもあり、その後は特に会話も交わさず、それぞれ営業室に戻った。


仕事に取り掛かるため、すぐに自分の席に着く。
オウスケくんも、すぐに外回りに向かった。


……早く落ち着いてよ、心臓。
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