あなたのことは絶対に好きになれない!
お昼過ぎ。いつも通り自分のデスクで仕事をしていると、正面の窓口に見覚えのあるお客さんが来た。

それは、合コンで出会った朝比奈さんだった。

合コンの時は派手目なメイクで、ミニスカートをはいていた彼女だったけど、今日はナチュラルメイクで、スーツを着ていた。仕事のお昼休みにここへ寄った、という感じだろうか。
隣の席で山田さんが朝比奈さんを見ながら「美人〜」と小声で囁いた。


朝比奈さんは、窓口の吉山さんとしばらく話をしていたので、吉山さんに用事があったんだと思ったのだけれど、ふと吉山さんがこちらへ振り向き、「山田さん。ちょっと早坂くん呼んできてくれる?」と頼んだ。

え? どういうこと?


声を掛けられた山田さんは特に気にする様子もなく、「早坂さんと会話出来ちゃう〜」なんて言いながら、彼のデスクの方へ向かっていった。


すぐにオウスケくんがこちらへやって来る。
朝比奈さんと一言二言挨拶を交わした彼は、簡易応接の方へ彼女を連れて行った。

簡易応接は私のデスクからかなり離れているため、二人の姿は見えないし、当然何を話しているのかなんて聞こえない。


「今の女の人、早坂さんの彼女ですか?」

ロビーにお客さんがいないのを確認してから、山田さんが吉山さんにそう尋ねた。


「彼女じゃないよ〜、知り合い」

「なぁんだ。美男美女のカップルかと思った」

そう言って、山田さんは席を立ってお昼休みに入った。
どうやら山田さんは、オウスケくんに憧れてはいるものの、恋愛的な意味で好意を寄せている訳ではないらしい。
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