桐谷高校殺人投票
小学校へ到着するほんの5分前、雨は降り出した。


台風のような大雨が一瞬にしてあたしたちを襲ったのだ。


先生に誘導され、あたしたちは公園の屋根の下に一旦非難したけれど、その頃にはもう全身がびしょ濡れだった。


けれど、子供だったあたしたちは雨に濡れたことが嬉しかったのを、よく覚えている。


「色々なことがあったよね、あたしたち」


里子が懐かしそうな声でそう言った。


「そうだよね。ずっと一緒にいたから、同じ記憶を共有してるもんね」


そういう子たちって、きっと本土では珍しいだろう。


同じ場所で生まれ、同じ経験を積んできた。


あたしたちの中には普通よりずっと強い絆があるような気がしていた。


「元に戻りたいな」


裕司が真剣な表情でそう言った。


「……そうだね」


あたしは頷き、窓の外を見た。


相変わらず雨は降り続いている。
< 135 / 212 >

この作品をシェア

pagetop