桐谷高校殺人投票
「裕司はなにもわかってない」


梨央の声が震える。


「小学校の頃、おでこに大きなコブができている子がいたことを覚えてる?」


梨央の言葉にあたしは記憶を巡らせた。


あたしたちは1人も欠けずに高校まで来た。


他に誰かがいれば覚えているはずだった。


「1日だけ、同じクラスにいた子か?」


あたしが思い出せずにいると、大和が梨央へそう聞いた。


「そうだよ。あの子、森の中の病院に入院してた子だったの」


そう言われて、あたしの記憶が徐々に蘇ってきた。


あれは小学校2年生の頃だった。


夏休みに入る一週間前に、見知らぬ男の子がクラスに来たのだ。


『今日から一週間、同じクラスで勉強することになりました』


そう言って自己紹介をしていた場面が不意に浮かんできた。


でも、名前までは覚えていない。
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