桐谷高校殺人投票
抵抗する彩を押さえておけるのは時間の問題だった。


死なないために必死になっている彩の力は普通の女子生徒以上だった。


手の中で暴れられれば暴れられるほど、自分の手の力が弱くなっていくのがわかった。


それなのに……。


「無理だよ……」


サツキがカッターナイフを手に持ったまま、そう言ったのだ。


サツキの頬には幾筋もの涙が伝っている。


「なに言ってんの? ヤラなきゃ、ヤラレるんだよ!?」


あたしは必死になってそう叫んだ。


サツキだって死にたくないはずだ。


今の内に手に持っているカッターナイフで、彩の首を切ってしまえばいいだけだ。


そう思うのに、サツキは動かなかった。
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